農学院生命フロンティアコース博士課程1年の内山昌典さん(生物化学研究室)と同コース博士課程3年のNapaporn Chintagavongseさん(応用食品科学研究室)が2024年度日本農芸化学会北海道支部第1回学術講演会において日本農芸化学会北海道支部優秀発表賞を受賞

 2024年7月13日にとかちプラザ (帯広市) で開催された2024年度日本農芸化学会北海道支部第1回学術講演会において、農学院農学専攻生命フロンティアコース博士課程1年の内山昌典さんと博士課程3年のNapaporn Chintagavongseさんが日本農芸化学会北海道支部優秀発表賞を受賞しました。

 受賞にかかる発表演題と発表内容は以下のとおりです。

 

内山昌典さんの発表演題:
「Structural analysis of galactose 2-epimerase complexed with D-galactitol」
Masanori Uchiyama1, Wataru Saburi1, Shiho Takei2, Toyoyuki Ose2, Haruhide Mori1
1Graduate School of Agriculture, Hokkaido University, 2Graduate School of Life Science, Hokkaido University

糖質の異性化を触媒する酵素は、豊富な糖質から希少糖質を合成する触媒として有用です。内山さんは腸内細菌からD-ガラクトースを希少単糖D-タロースに異性化するガラクトース2-エピメラーゼを発見しました。本研究では,この新規酵素の基質特異性の機構を明らかにすることを目的とし、基質様化合物D-ガラクチトールとの複合体構造をX線結晶構造解析により明らかにしました。本酵素の長いループ構造上のトリプトファン残基が基質結合部位においてD-ガラクトースやD-タロースとの結合に適した配置をとり、これら単糖への高い特異性に重要であることを指摘しました。

 

Napaporn Chintagavongseさんの発表演題:
「Studies to reduce rancidity in ripened cheese caused by koji adjunct from Aspergillus oryzae AHU 7139」
Napaporn Chintagavongse1, Koichi Tamano2, Toru Hayakawa1, Jun-ichi Wakamatsu3, Haruto Kumura1
1Applied Food Science Laboratory, Graduate School of Agriculture, Hokkaido University
2Bioproduction Research Institute, Hokkaido Center, AIST
3Cell and Tissue Biology Laboratory, Graduate School of Agriculture, Hokkaido University

麹菌がもつ高いタンパク質分解活性はチーズの風味強化への応用に有望と考えられますが、実際にチーズに応用すると、麹菌が示す高い脂肪分解活性のために乳脂肪から揮発性脂肪酸を遊離して風味が損なわれてしまいます。Chintagavongseさんは本学保有の麹菌Aspergillus oryzae AHU 7139が保有する多数のリパーゼの中からこの風味劣化に強く関与するリパーゼ分子を特定し、この分子をコードする遺伝子の発現を強く抑制することで、麹菌のリパーゼ産生を激減させつつ、プロテアーゼ産生を維持する培養条件を見出しました。この製法に基づいて得た培養物(麹)をチーズに添加し、熟成させた試作品には従来感知された風味上の欠陥はなく、麹菌を乳製品に応用する新たな可能性を示しました。

 

 日本農芸化学会は、農芸化学分野の基礎及び応用研究の進歩を図り、それを通じて科学、技術、文化の発展に寄与することにより人類の福祉の向上に資することを目的として、1924年に設立された学術団体です。日本農芸化学会北海道支部優秀発表賞は、優れた一般講演を行った筆頭発表者に授与される賞です。

【参考】日本農芸化学会北海道支部
    http://hokkaido.jsbba.or.jp

 

受賞した内山昌典さん(写真左)とNapaporn Chintagavongseさん(写真右)