農学部生物機能化学科4年の入江明歩さん、農学院生命フロンティアコース修士課程2年の鈴木彰さん、同コース博士課程3年の太田智也さんと博士課程2年のWen Zhangさんが2023年度日本農芸化学会北海道支部第2回学術講演会において学生優秀発表、日本農芸化学会北海道支部学生会員奨励賞をそれぞれ受賞

 12月9、10日に北海道大学農学部にて開催された2023年度日本農芸化学会北海道支部第2回学術講演会において、学部生物機能化学科4年の入江明歩さん(食品栄養学研究室)と農学院生命フロンティアコース修士課程2年の鈴木彰さん (生物有機化学研究室)が学生優秀発表を、農学院生命フロンティアコース博士課程3年の太田智也さん(生物化学研究室)と同コース博士課程2年のWen Zhangさん(生態化学生物学研究室)が日本農芸化学会北海道支部学生会員奨励賞をそれぞれ受賞しました。

 日本農芸化学会は、農芸化学分野の基礎及び応用研究の進歩を図り、それを通じて科学、技術、文化の発展に寄与することにより人類の福祉の向上に資することを目的として、1924年に設立された学術団体です。学生優秀発表賞は、優れた一般講演を行った発表者に授与される賞であり、北海道支部学生会員奨励賞は、農芸化学の進歩に寄与するすぐれた研究をなし、なお将来の発展を期待し得る北海道支部所属の学生会員に授与される賞です。

 

 発表演題と発表内容はそれぞれ以下のとおりです。

 

学生優秀発表

演題名:
「ラットにおけるL-リジンのGLP-1 分泌促進作⽤」
〇入江明歩、比良徹(北大農)

発表概要:
GLP-1は栄養素刺激によって分泌される消化管ホルモンであり、血糖値や食欲を調節する作用を持つため、糖尿病や肥満治療の標的になり得るとして注目されています。これまで、糖やペプチド、脂肪酸、一部のアミノ酸などの食品成分がGLP-1分泌を促進することが知られていましたが、本研究ではアミノ酸のL-リジンがGLP-1分泌を誘導するということを初めて見出しました。このような結果は、食品成分を利用した疾病予防・病態改善に寄与することが期待されます。

 

発表演題:
「ゼニゴケのビスビベンジル類生合成における二重結合還元酵素の同定」
○鈴木彰、松浦 英幸、北岡 直樹(北大農)

発表概要:
ビスビベンジル類は、ゼニゴケなどコケ植物に大量に蓄積することが知られている芳香族化合物です。本研究では、ゼニゴケのビスビベンジル類生合成経路上の二重結合還元酵素の候補遺伝子の機能解析を行いました。ビスベンジル類の植物体内における生理作用の解明やゼニゴケを宿主とした有用物質生産への、本研究結果の応用が期待されます。

 

 

学生会員奨励賞

発表演題:
「雪腐病菌由来β-グルカン分解酵素の機能と構造に関する研究」
太田智也

発表概要:
太田さんは、イネ科植物の病原性糸状菌であるMicrodochium nivaleにおいてほとんんど知見がなかった糖質代謝関連酵素に関し、β-グルコシダーゼとエンドβ-1,3-グルカナーゼを培養上清に見出し、それらの機能と構造を詳細に解析しました。β-グルコシダーゼについては、様々なグルコオリゴ糖に対する幅広い加水分解能を示すこと、配糖体基質への反応においてグルコース (生成物) と基質により阻害を受けることを明らかにしました。基質による阻害は、反応中間体であるグルコシル酵素中間体への水分子の結合を基質分子が妨げることにより反応の進行が阻害されるモデルを提案しました。エンドβ-1,3-グルカナーゼについては、エキソ型酵素と類似した構造を持ちながらも多糖ラミナリンにエンド様式で作用することを確認し、ラミナリンへの作用様式の解析とX線結晶構造解析に基づき、本酵素がラミナリン主鎖のβ1-6結合に隣接した還元末端側のβ1-3結合を特異的に加水分解すること、これに適した基質結合部位の構造を持つことを明らかにしました。本酵素による基質結合機構の解析に不可欠なβ1-3結合とβ1-6結合を含む任意のオリゴ糖の有機合成経路も開発しました。

 

発表演題:
「生理活性物質の機能解明を目指した低分子安定同位体標識法の検討」
Wen Zhang

発表概要:
安定同位体標識法は、質量分析計の進歩に伴い生理活性化合物の代謝経路を研究する上で非常に重要な手法となっています。Wenさんは対象物によって化学的手法、生化学的手法を使い分け、これまで達成されたことのない生理活性化合物の安定同位体標識を達成しました。

 

 

【参考】日本農芸化学会北海道支部
http://hokkaido.jsbba.or.jp

 

 

受賞した入江明歩さん(右)と指導教員の農学研究院・比良徹 准教授(左)
受賞した鈴木彰さん
受賞した太田智也さん(左)とWen Zhangさん(中央)