農学院生産フロンティアコース作物栄養学研究室の村島和基さん(博士課程1年)と望月杏樹さん(修士課程1年)が土壌肥料学会2023年度愛媛大会において若手ポスター発表優秀賞を受賞

 2023年9月12日~14日に愛媛大学にて開催された日本土壌肥料学会2023年度愛媛大会において、農学院生産フロンティアコース作物栄養学研究室の村島和基さん(博士課程1年)と望月杏樹さん(修士課程1年)が若手ポスター発表優秀賞を受賞しました。

 日本土壌肥料学会は、食糧の生産に深く関係している土壌学、肥料学、植物栄養学の近代的な理論と技術体系を構築することを目的として、1927年に設立された学術団体です。

 発表演題と発表内容はそれぞれ以下のとおりです。

 

発表演題:「マルチオミクスによるダイズ子実収量に関わる複合的要因解析」
○村島和基・丸山隼人・渡部敏裕・大津厳生・草野都・杉山暁史・小林奈通子・濱本昌一郎・福島敦史・大熊直生・藤原風輝・二瓶直登・市橋泰範・信濃卓郎

国内ダイズ生産は海外と比べて単収が低く、生産性改善による安定供給が希求されています。これまで日本国内でダイズの生育阻害要因調査が実施されてきましたが、現場における生産性の改善効果は十分に表れていません。そこで、複雑なダイズ生育機構を明らかにするためには、これまでにない新たな解析手法を用いて詳細に調査する必要があります。加えて、近年環境保全の観点から環境負荷を低減した持続的な作物生産システムの確立が求められています。本研究ではダイズ子実収量に寄与する因子群及びそれらの因果関係を機械学習などの手法を用いて明らかにすることを目的としました。
WGCNAパッケージを用いた重み付き相関ネットワーク解析を行いました。ダイズ収量パラメータが含まれるモジュールは根滲出物と土壌抽出性代謝物を多く含み、土壌物理性、土壌の全炭素、全窒素、土壌無機元素で構成されていました。また、ダイズ収量を目的変数とした特徴量選択でHCl抽出性Moや土壌抽出性代謝物の寄与度が高く、統計的因果探索を通して収量への因果効果が示されました。加えて、牛糞堆肥区では他処理区と比べて根滲出物と土壌微生物が寄与度の高い説明変数として選択され、収量への関与が示唆されました。

 

 

発表演題:「植物固有のセシウム吸収係数を用いた植物体放射性セシウム濃度予測の検討」
○望月杏樹・鈴木政崇・久保堅司・藤村恵人・浅枝諭史・丸山隼人・渡部敏裕・信濃卓郎

土壌から農作物への放射性セシウム(137Cs)移行を把握・予測することは原発事故後の復興及びリスク管理に重要です。これまで、土壌の交換態カリウム(ExK)含量と137Cs移行抑制の関係には土壌や植物種の違いが影響することが示されてきました。近年、土壌の交換態137Cs(Ex-137Cs)が植物への137Cs移行において土壌種によらず重要な要素であることが示唆されていますが、各植物種との関係は調査されていません。
本研究では、異なる土壌で栽培された複数の植物種を用いて137Cs濃度と土壌のEx-137Cs及びExK濃度の関係について調査し137Cs移行の作物種間差を評価しました。さらに、137Cs移行における植物固有の係数を水耕培養液のCs/K濃度比から決定し、植物体の137Cs濃度予測に適用できるかを検討しました。
その結果、土壌中Ex-137Cs/ExK濃度比と地上部137Cs濃度には各植物種で有意な正の相関(P<0.05)が認められ、植物により固有の回帰係数を示しました。コマツナの水耕培養液中133Cs/K濃度比と地上部133Cs濃度にも有意な正の相関(P<0.05)が認められ、回帰係数をコマツナのCs吸収係数として土壌中Ex-137Cs/ExK濃度比を用いた地上部の137Cs濃度予測式に用いたところ、土壌条件下で栽培した地上部137Cs濃度の実測値と有意な相関が得られました(r=0.94,P<0.05)。
以上より、植物への137Cs移行には土壌種によらず土壌中Ex-137Cs/ExK濃度比が関与しており、溶液中のCs/K比と植物体Cs濃度の関係式から得られる植物固有の係数を移行予測に利用できる可能性が示されました。

 

受賞した村島和基さん
受賞した望月杏樹さん