農学院生命フロンティアコース修士課程2年の安井萌香さん(食品機能化学研究室)と修士課程1年の水間志織さん(食品栄養学研究室)が第28回日本食物繊維学会学術集会発表賞を受賞

 2023年11月4、5日に愛媛大学(愛媛県松山市)において開催された第28回日本食物繊維学会学術集会において、農学院生命フロンティアコース修士課程2年の安井萌香さん(食品機能化学研究室)と修士課程1年の水間志織さん(食品栄養学研究室)が「発表賞」を受賞しました。

 発表賞(Presentation Award)の対象は、本会学術集会一般講演で特に優れた発表をした発表者に授与されます。

 受賞にかかる発表演題と発表内容は以下のとおりです。

 

発表演題:
マウスにおいてフルクトオリゴ糖の摂取は盲腸内容物中のmicroRNAが培養腸内細菌叢の構成に及ぼす影響を変化させる
○安井 萌香,山口 万柚子,逢坂 文那,加藤 英介,園山 慶
(北大院農)

安井さんらは最近、マウスの糞便中に存在する腸上皮細胞由来のmicroRNAが、培養した腸内細菌叢の構成を変化させることを報告しましたが(Ohsaka F, Yamaguchi M, Teshigahara Y, Yasui M, Kato E, Sonoyama K. Murine fecal microRNAs alter the composition of cultured gut microbiota. Biochem Biophys Res Commun in press)、今回の発表では、そのようなmicroRNAの作用に食品成分が影響することを初めて報告しました。これにより、宿主由来のmicroRNAが宿主ー腸内細菌叢のクロストークを媒介し、そのことに影響する環境因子として食品成分が存在することを示唆しました。

 

発表演題:
アルロースによる伸展刺激を介したGLP-1分泌機構の解明
○水間 志織, 比良 徹(北大院・農)

GLP-1は、血糖値や食欲を調節する消化管ホルモンで、糖尿病や肥満の治療に使われています。
このGLP-1の分泌を食品成分でコントロールする研究の中で、アルロースという糖が強力にGLP-1の分泌を促進することが見出されましたが、そのメカニズムは不明でした。アルロースとは、天然にごくわずかしか存在しない希少糖の一種で、過食や肥満を抑制する作用が報告されています。
本研究は、小腸で生じる伸展刺激がアルロースによるGLP-1の分泌促進に関わることを見出しました。
このような研究成果は、食品成分による消化管ホルモン分泌調節を介した疾病予防や病態改善に寄与することが期待されます。

 

 日本食物繊維学会は、1996年に発足した日本食物繊維研究会を前身として2004年に設立されました。本学会は、食物繊維、難消化性オリゴ糖をはじめとする食品の難消化性成分をルミナコイド(Luminacoids)として新しい概念を提案しました。このルミナコイドに関する学理および応用の研究についての発表、知識の交換、情報等の提供、啓発活動を行うことを目的とした学会です。会員は、栄養学、医学、農学、薬学等の研究者ならびに関連する企業(賛助会員)によって構成されています。

一般社団法人 日本食物繊維学会ウェブサイト
http://jdf.umin.ne.jp/

 

受賞した安井萌香さん(右)
受賞した水間志織さん(左)