農学院環境フロンティアコース花卉・緑地計画学研究室の大越陽さん、相川萌音さん、内田英利香さんが第27回日本造園学会北海道支部大会において口頭発表賞を受賞
2023年10月28日(土)に札幌市立大学まこまないキャンパスで開催された第27回日本造園学会北海道支部大会において、農学院環境フロンティアコース花卉・緑地計画学研究室の学生3名が口頭発表学生部門において表彰されました。
日本造園学会は、造園という伝統的な職能が蓄積してきた技術と文化のうえに、近代的な理論と科学的体系を構築することを目的として、1925年に設立されたわが国最初の造園学に関する学術団体で、現在約3,200人の会員を擁しています。北海道支部は北海道在住の会員を対象に1996年に設立された団体です。
受賞者ならびに発表題目は以下の通りです。
優秀賞:大越陽さん(農学院環境フロンティアコース博士課程2年)
「宮城県気仙沼市三島海岸における防潮堤法面緑化上に出現した徘徊性昆虫群集」
東日本大震災後、被災地では大規模な防潮堤建設が行われ、その生態系への影響が懸念されています。当該地域のうち、宮城県気仙沼市三島海岸では防潮堤法面上に覆砂及び緑化施工が行われました。本研究では、海浜生態系における生物多様性の観点から、この法面上に生息する徘徊性昆虫群集の把握を目的として調査を行いました。結果、海浜にのみ生息する種はほとんど確認されず、内陸性の種が全個体数の約8割を占めていました。一方、残りの約2割は海浜を主な生息地とする種のうち内陸でも見られる種でありました。これらの種は自然地では海浜植生帯に生息しているため、防潮堤法面上での海浜植物保全が徘徊性昆虫の保全にも繋がると考えられます。
奨励賞:相川萌音さん(農学院環境フロンティアコース修士課程2年)
「札幌市の公開空地の植栽形態及び緑視率と歩行経路・滞留との関係」
公開空地(民間敷地内のオープンスペース)は都市の民有地緑化の場として重要であり、緑視率(視界に占める緑の割合)を考慮した緑化が求められています。本研究は、公開空地の植栽形態及び緑視率と利用実態との関係を明らかにすることを目的とし、四季を通じて行動観察を行いました。調査結果から植栽形態が単純で緑視率が低い場合は公開空地が歩行経路となりやすい傾向が見られました。一方、植栽形態が複雑で緑視率が高い場合は滞留時間が長い傾向がありました。歩行及び滞留を促す植栽形態・緑視率が異なることが示唆され、これらを周辺環境に合わせ適切に配置することが公開空地の魅力向上や利用促進に役立つと考えられました。
奨励賞:内田英利香さん(農学院環境フロンティアコース修士課程2年)
「札幌市内の水遊び場利用者の実態とニーズに関する研究」
水遊びは子どもの科学的な思考や社会性を養う上で重要となる一方で、水遊び場は衛生・安全管理、維持管理コストが課題となりやすいです。札幌市において、夏の気温の上昇から水遊び場の需要が高まることが予想される一方で、利用者のニーズと対応していない可能性が考えられました。本研究では、今後の整備及び管理方針に向けて、利用者の実態・ニーズを明らかにすることを目的とし、アンケート調査を行いました。結果、「人為的な水遊び場」を好む人は整備の充実を求める一方で、「自然的な水遊び場」を好む人は自然の豊かさなどを重視し、必要以上の整備を求めないことから、水遊び場によって求められている管理や整備の程度が異なることが考えられました。