農学部森林科学科樹木生物学研究室の土屋良さん、農学院環境フロンティアコース木材化学研究室の佐藤翔一さん、木材工学研究室の堀越健太郎さんの3名が学生優秀口頭発表賞を、農学部森林科学科樹木生物学研究室の千葉悠斗さんが優秀ポスター賞を第74回日本木材学会大会において受賞

 2024年3月13日~15日に京都大学で開催された第74回日本木材学会大会において、農学部森林科学科樹木生物学研究室の土屋良さん(学部4年)、農学院環境フロンティアコース木材化学研究室の佐藤翔一さん(修士課程1年)、木材工学研究室の堀越健太郎さん(修士課程1年)の3名が学生優秀口頭発表賞を、農学部森林科学科樹木生物学研究室の千葉悠斗さん(学部4年)が優秀ポスター賞をそれぞれ受賞しました。

 日本木材学会では、研究発表などを通して会員相互の研鑚、情報交換、親睦をはかるための大会が毎年1回、全国各地で開催されています。 

 受賞にかかる発表演題と発表内容は以下のとおりです。

 

「先史時代におけるハシドイの利用要因の解明に向けた材質評価」(文化財部門)
○土屋 良、玉井 裕、佐々木 貴信、佐野 雄三
北海道の先史時代の遺構において、ハシドイ材の出土頻度は天然林での蓄積のわりにきわめて多いことが分かっています。なぜハシドイ材がそれほど多用されていたのかを解明するため、強度的性質と耐朽性を調べました。その結果、強度性能は特別に優れるわけではないものの、耐朽性が極めて高いことを明らかにしました。

 

「アセチル基を有するグルコマンナンが針葉樹の木化過程に及ぼす影響」(リグニン部門)
○佐藤 翔一、渡部 陸人、鈴木 栞、重冨 顕吾、浦木 康光
本研究では、アセチル基を保持したままの粗ガラクトグルコマンナン(GGM)を針葉樹から熱水抽出し、このGGMをQCM-Dセンサー上の針葉樹セルロースナノファイバーに吸着させ、人工リグニンの生成を試みました。その結果、GGMはリグニンの形成(木化)を阻害し、一方、キシランがセルロースに吸着する足場として機能することを明示しました。この機能発現には、アセチル基の存在が重要であり、細胞壁形成におけるGGMの合目的性を明らかにしました。

 

「曲率半径が増加する向きの荷重に対する湾曲LVLの強度性能」(木質構造部門)
○堀越 健太郎、佐々木 貴信、澤田 圭、佐々木 義久
単板を積層接着時に湾曲させて製造する湾曲Laminated Veneer Lumber (単板積層材、LVL)は、小さい曲率半径まで曲げることができる他、面材としても使用可能であるなど幅広い用途への活用が期待されます。その強度性能について、曲率半径を増加させる向きの荷重に対する強度性能を調べました。その結果、湾曲LVLは、単板の横引張強度が小さいことが原因で、既存の木質材料である湾曲集成材よりも小さい半径応力で破壊することを明らかにしました。

 

「広葉樹多湿心材の木部繊維間壁孔の構造と水分分布」(組織構造・培養部門)
○千葉 悠斗、佐野 雄三
広葉樹の中には、樹幹の内部深くに多くの水分を集積する樹種があります。この多湿な材部は多湿心材と呼ばれ、凍裂の原因にもなります。多湿心材の存在は半世紀余り前に発表者の研究室にて確認・命名されましたが、その水分集積メカニズムは現在でもよく分かっていません。本研究では、この多湿心材形成と木部繊維間壁孔という細胞間の連絡路に散見されるperforated pit membraneという微細構造物との関連性について検討し、perforated pit membraneは多湿化の誘発因子ではないことを示しました。

左から土屋良さん、千葉悠斗さん、佐藤翔一さん、堀越健太郎さん