プレスリリース「ウイルスの強毒化を防ぐエンドウの仕組みを発見」(中原 健二 講師)

 ウイルスはその高い増殖力や変異頻度のため, 薬剤耐性を獲得したり, 動植物の免疫機構を回避したりして病気を引き起こす強毒ウイルスに進化してしまいます。このことがウイルス病の制御を困難にしています。これに対抗して, エンドウは別々の免疫システム二つを協働させて, ウイルスが一方の免疫システムを回避するよう進化するともう一方の免疫システムにその感染がより強く阻害されるように仕組まれていました。このウイルスにトレードオフ(痛し痒し)を強いることで強毒ウイルスへの進化を防いでいること(図参照)を厚見 剛 研究員(現, 国立研究開発法人産業技術総合研究所), 中原 健二植物病原学研究室 講師らの研究グループが発見しました。進化が早いウイルスに対抗するための植物の防御戦略であると思われます。本知見を活用することで, 将来, ウイルス病を発症しない性質=抵抗性が永続する作物を育種するための新たな抵抗性育種技術の開発が期待されます。本成果は6月8日に米国微生物学会誌Journal of Virology (外部リンク)に発表されました。また, 関連の総説が6月13日に米国植物病理学会誌Molecular Plant-Microbe Interactions (外部リンク)に発表されました。

図 ウィルスにトレードオフを強いることで強毒化を防ぐ植物の仕組みを比喩的に表した変則ジャンケンウィルスは後出しする権利(進化が速い)を持つが、その代わり植物は一度に二つの手を出す権利(同じウィルスに対する二つの免疫機構)を持つ。この時、ウィルスは引き分けに持ち込む(強毒化しない)しかない。