農学院の井上史朗さんとNapaporn Chintagavongseさんが2024年度日本農芸化学会北海道支部第2回学術講演会において北海道支部学生会員奨励賞 (学生会員)を、足立悠輔さん、⼤島翔汰さん、丹愛佳さんが学生優秀発表をそれぞれ受賞
11月30日、12月1日に北海道大学農学部にて開催された2024年度日本農芸化学会北海道支部第2回学術講演会において、農学院の井上史朗さん (生命フロンティアコース 生物有機化学研究室 博士課程2年)とNapaporn Chintagavongseさん (同コース 応用食品科学研究室 2024年9月博士課程修了)が日本農芸化学会北海道支部 奨励賞(学生会員)を、足立悠輔さん (同コース 食品機能化学研究室 修士課程1年)、⼤島翔汰さん(同コース 食品機能化学研究室 修士課程2年)、丹愛佳さん (同コース 生物有機化学研究室 修士課程2年)が学生優秀発表をそれぞれ受賞しました。
日本農芸化学会は、農芸化学分野の基礎及び応用研究の進歩を図り、それを通じて科学、技術、文化の発展に寄与することにより人類の福祉の向上に資することを目的として、1924年に設立された学術団体です。学生優秀発表賞は、優れた一般講演を行った発表者に授与される賞であり、北海道支部学生会員奨励賞は、農芸化学の進歩に寄与するすぐれた研究をなし、なお将来の発展を期待し得る北海道支部所属の学生会員に授与される賞です。
【参考】日本農芸化学会北海道支部
http://hokkaido.jsbba.or.jp
受賞にかかる題目・演題名と概要は、以下のとおりです。
北海道支部 奨励賞(学生会員)
井上 史朗
受賞題目『OPDA異性化経路に関する研究』
概要:OPDA異性化経路は、近年存在が示された生合成経路であり、詳細の多くが未解明です。本経路によって、私たちの生活に関わりの深い香料成分cis-Jasmoneや天然殺虫成分ピレスリンが生合成されています。本会では、OPDA異性化経路の解明につながる3つの結果(1. OPDA類縁化合物群の系統的重水素標識化合成法の確立、 2. cis-Jasmone生合成経路の解明、 3. 除虫菊におけるピレスリン内生量を増加させるストレス処理の探索)について発表を行いました。
Napaporn Chintagavongse
受賞題目『Studies to reduce rancidity in ripened cheese caused by koji adjunct from Aspergillus oryzae』
概要:麹を熟成型チーズの風味強化剤として活用する場合、タンパク質分解活性が重要であることはいうまでもありませんが、同時に脂肪分解活性にも留意する必要があります。それは乳脂肪が多種にわたる脂肪酸より構成されるため、麹中のリパーゼがチーズ熟成時に作用すると、揮発性脂肪酸が遊離・蓄積し、風味に悪影響を与えるためです。本会では、この原因となるリパーゼ分子を特定し、当該リパーゼ遺伝子の発現を抑制する製麴条件を導入することにより、そこで得られた麹が本目的に適したものであることを実証した一連の研究について発表を行いました。
学生優秀発表賞
演題名『カシス、アカジソ、ミオイノシトールが雌性マウスの性ホルモン分泌に与える影響の検証』
〇足立悠輔1, 加藤英介1, 稲垣洋介2(1北⼤院農,2日本薬業)
発表概要:性ホルモンは、性機能以外にも身体機能や認知機能にも関わることが知られており、体内での性ホルモン量が低下すると体には更年期障害と呼ばれる様々な不具合が生じます。本研究では、男性更年期障害を予防する目的で開発した食品が、女性に対しても効果を有するかを検討しました。
演題名『苦味受容体Tas2r108 はcAMP の調節を介して脂肪細胞の分化を制御する』
〇⼤島翔汰, 足立悠輔, 加藤英介(北⼤院農)
発表概要:苦味受容体は味覚を司るタンパク質ですが、口の中以外にも存在しています。本研究では、そのような口の中以外に存在する苦味受容体のうち、脂肪細胞においてどのような働きを担っているか、その一端を明らかとしました。
演題名『光親和性標識プローブへ展開可能なジャスモン酸類縁体の合成とバレイショ塊茎
形成誘導活性の評価』
〇丹愛佳, 北岡直樹, 村井勇太,橋本誠,松浦英幸(北⼤院農)
発表概要:植物ホルモンの一種であるジャスモン酸 (JA) 類は、現在同定されているJAのシグナル伝達機構とは異なる経路によってバレイショ塊茎形成誘導を制御していることが示唆されています。本研究ではJAの未知の受容体を同定する光親和性標識プローブへ展開可能なJA類縁体の塊茎形成誘導活性を評価しました。その結果、合成したJA類縁体は塊茎形成誘導活性を保持していることを明らかにしました。