北海道大学大学院農学研究院とパタゴニア日本支社 「多年生穀物 カーンザ」の国内生育試験を開始

2024年7月19日 一部内容訂正 

 

 北海道大学大学院農学研究院の内田義崇准教授と中島大賢助教のグループと、パタゴニア日本支社(支社長マーティ・ポンフレー)は、多年生穀物「カーンザ」の生育試験を開始しました。

 

【概要】
 カーンザは同じ場所で何年も生育する特性を持つ多年生穀物で、世界中で育てられている小麦、米、トウモロコシなどの一年生穀物とは異なり、収穫後もそのまま残り、2~3年、あるいはそれ以上の期間も実をつけるという特徴を有しており、また、長い根系を構築することも特徴的です。このため、小麦やトウモロコシのように毎年畑を耕す必要がなくなり、土壌の健全度が高まり、土壌の劣化や窒素汚染から地下水を保護しつつ、食糧を供給するなど、地球規模の課題を解決することに貢献できると考えられています。
 カーンザは現状北米を中心に栽培され、ビールやパスタなどの商品として購入することができるようになっており注目を集める一方、日本国内での栽培試験に関する報告はありませんでした。そのため、国内における生育試験を行なう必要があり、カーンザ生育に適する気候条件に近く、また国内の一大産地である北海道での研究を進めています。
 本研究はパタゴニア日本支社と共同で行っています。パタゴニアは、革新的な穀物「カーンザ」により、土壌を修復し、地下水を保護しつつ、世界に食糧を供給しようという機運を高めるために、2016年にカーンザを使用した世界初の製品となるクラフトビールを発売しました。

 

【共同研究団体概要:パタゴニア日本支社】
「私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む。」というミッション・ステイトメントを掲げるパタゴニアは米国カリフォルニア州ベンチュラに拠点を置くアウトドア企業です。1973年にイヴォン・シュイナードが創業しました。Bコーポレーション認証を取得しており、1% for the Planetの加盟企業です。パタゴニアは製品品質の高さと環境保護活動において国際的に高く評価されています。独自の所有形態によって、事業に再投資されなかった利益を配当金として地球を守るために分配します。 
地球と人間の両者を救う最善策は食料の生産方法を変えることだと考え、日本では2016年に食品コレクション「パタゴニア プロビジョンズ」をスタートしました。

パタゴニア日本支社 Patagonia International Inc., Japan Branch
所在地  :神奈川県横浜市戸塚区川上町91-1 BELISTAタワー東戸塚5階
設立年月日:1988年8月23日
日本支社長: マーティ・ポンフレー
公式ウェブサイト: www.patagonia.jp

 

 

【目的】
●北海道内でカーンザの生育が可能なのか、またその生産性や土壌に与える影響などを定量する。

 

【成果】
  2022年夏から開始している生育実証試験を経て、秋に植えたカーンザは北海道内(場所は秘匿)において越冬し結実することがわかりました。さらに、多年生穀物を栽培する際に課題となる雑草の繁茂についても一定の知見が得られました。

 

【展望】
 多年生穀物として2年目、3年目の生育をさらに調査していくことを予定しています。さらに、研究のための生育面積を広げ、施肥設計や雑草管理の体系化、収穫方法の効率化など、北海道で実用化するための研究を進めていく予定です。

 

【注意事項】
種の譲渡や試験栽培圃場の見学に関する要望・質問には対応しかねますので、悪しからずご了承ください。
本共同研究は、カーンザを管理するLand Institute、北海道大学及びパタゴニアによる研究契約に基づき、本研究目的に限定して適切かつ厳重にカーンザを管理して行われております。
また、現在、カーンザの種は、世界中で絶対量が限られており、Land Instituteの管理監督のもと、北米地域以外に置いては特別に関係性の深い協力ブランド及びそのパートナー研究者らによる試験目的での研究利用に限定して提供されています。
したがいまして、日本国内において私たちのグループからカーンザの種を提供することはできず、試験栽培圃場の見学のご希望にも沿えないことをご理解ください。
また、Land Instituteへの問い合わせも併せてお控えいただけますようお願いいたします。

 

【参照】
パタゴニア ウェブサイト:多年生穀物「カーンザ」
https://www.patagoniaprovisions.jp/pages/sourcing-kernza

 

お問い合わせ先
北海道大学大学院農学研究院 准教授 内田義崇(うちだよしたか)
メール uchiday@uchidalab.com
パタゴニア日本支社 PR窓口
メール japan.pr@patagonia.com