トピックス

　2023年8月5日にとかちプラザ (帯広市) で開催された2023年度日本農芸化学会北海道支部／第53回日本栄養・食糧学会北海道支部合同学術講演会において、農学院生命フロンティアコース博士課程3年の太田智也さん（生物化学研究室）と博士課程2年のWen Zhangさん（生態化学生物学研究室）が日本農芸化学会北海道支部優秀発表賞を、同コース修士課程2年の嶋田陸さん（食品機能化学研究室）が若手奨励賞を受賞しました。

　発表演題と内容は以下の通りです。

発表演題：
「GH3β-グルコシダーゼMnBG3Aの反応速度と基質阻害に対する単糖の影響」
◯太田智也1，佐分利亘1，Linda Jewell2, Tom Hsiang3, 今井亮三4，森春英1
（1北大院農，2カナダ農務省，3ゲルフ大，4農研機構）

　糖質加水分解酵素ファミリー3 (GH3) に分類される雪腐菌 (Microdochium nivale) 由来β-グルコシダーゼは、配糖体p-ニトロフェニルβ-グルコシドとの反応において顕著な基質阻害と生成物グルコースによる阻害を示します。本研究では、この基質阻害が単糖のキシロース、ガラクトースおよびマンノースにより緩和されること、これら単糖濃度依存的に反応速度が変化することが示されました。反応速度の基質濃度依存性の詳細な解析により、単糖の酵素への結合が、基質阻害を引き起こす第二の基質分子の酵素への結合と競合すること、単糖結合型酵素による反応速度が単糖により異なることが示されました。

 

発表演題：
「Accumulation of squalene in filamentous fungi Trichoderma virens PS1-7 in the presence of butenafine hydrochloride, squalene
epoxidase inhibitor. -Biosynthesis of ¹³C-enriched squalene」
〇Wen Zhang, Kazu Sunami, Shuo Liu, Zihan Zhuang, Yasuko Sakihama, Yuta Murai, Makoto Hashimoto, Yasuyuki Hashidoko

　Zhangさんは、通常スクワレンを蓄積しないとされる糸状菌類に、代謝酵素スクワレンエポキシダーゼ阻害剤を添加することで、菌体内にスクワレンを蓄積する現象を見出しました。この現象を利用し、世界で初めて炭素の安定同位体¹³Cにより標識したスクワレンの（生）合成を達成しました。

 

発表演題：
「アネキシンA10は小腸パイエル板上皮細胞においてM細胞マーカーGP2と共局在する」
〇嶋田陸 1, 水落圭紀 1, 岩瀬拓真 1, 逢坂文那 1, 内山孝司 2, 田邊宏基 3, 山本達朗 3, 園山慶 1
（1 北大院農, 2 北里大・理, 3 名寄市大）

　嶋田さんは、小腸において食物成分や腸内細菌などの外来抗原の取込みを制御すると予想されるアネキシンA10というタンパク質が、マウスの小腸パイエル板上皮のM細胞に発現することを免疫組織化学的手法により証明しました。M細胞は抗原の取込みに特化した細胞であることから、アネキシンA10がM細胞における抗原取込みに関与することを提案しました。

 

　日本農芸化学会は、農芸化学分野の基礎及び応用研究の進歩を図り、それを通じて科学、技術、文化の発展に寄与することにより人類の福祉の向上に資することを目的として、1924年に設立された学術団体です。日本農芸化学会北海道支部優秀発表賞は、優れた一般講演を行った筆頭発表者に授与される賞です。
　日本栄養・食糧学会は1947年に設立され、栄養科学ならびに食糧科学に関する学理および応用の研究についての発表、知識の交換、情報の提供を行う事により、栄養科学、食糧科学の進歩普及を図り、わが国における学術の発展と国民の健康増進に寄与することを目的としています。

【参考】
公益社団法人 日本農芸化学会
https://www.jsbba.or.jp/

公益社団法人 日本農芸化学会北海道支部
http://hokkaido.jsbba.or.jp

公益社団法人 日本栄養・食糧学会
https://www.jsnfs.or.jp/

公益社団法人 日本栄養・食糧学会北海道支部
https://sites.google.com/eis.hokudai.ac.jp/jsnfshokkaido/