プレスリリース「森林が有する生物多様性の保全機能を経済評価」(庄子康 准教授)

 国立研究開発法人森林総合研究所と北海道大学、宮崎大学、甲南大学、京都大学は共同で、森林が有する生物多様性の保全機能を経済的に評価しました。私たちはインターネットを通じた質問により、一般市民が鳥類の保全にどのくらいの金額を支払ってもよいと考えているかを調査しました。11,800人に調査を依頼し、1,194人(10.1%)の回答から、針葉樹人工林に生息する鳥類の個体数を増やすことに、haあたり最大約30万円の経済的価値があると試算されました。針葉樹人工林に広葉樹を混交させると生息する鳥類の個体数が増加するため、人工林に広葉樹を混交させることは、木材の経済的価値に鳥類の経済的価値を加えることから、人工林に大きな社会的価値を付与することが明らかになりました。

 一方、私たちは現在、人工林を伐採する際、混交している広葉樹を残して生物多様性を維持する効果を実証するための野外実験を、北海道大学大学院農学研究院森林科学分野、北海道立総合研究機構林業試験場と共同で、北海道で行っています(写真1)。このような野外調査で、広葉樹を混交させることによって生じる価値やそのためのコストを経済的に評価することができれば、望ましい広葉樹の混交率を様々な状況下で求めることができるようになるでしょう。生態学と経済学を融合することにより、生物多様性の保全と資源生産の両立が効率的に図られると期待されます。

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写真:トドマツ人工林の主伐時に広葉樹を実験的に残し、その効果を検証しています(単木中量保残区)。菅野正人氏(北海道立総合研究機構林業試験場)提供