農学院生命フロンティアコース修士課程2年の後 琉さん(微生物生理学研究室)、相馬 陽さん(食品栄養学研究室)が2025年度日本農芸化学会北海道支部 第2回学術講演会にて学生優秀発表賞を受賞

2025年11月30日に北海道大学(札幌市)で開催された2025年度日本農芸化学会北海道支部第2回学術講演会において、農学院生命フロンティアコース修士課程2年の後藤 琉さん(微生物生理学研究室)と相馬 陽さん(食品栄養学研究室)が学生優秀発表賞を受賞しました。

受賞した発表演題と発表概要は以下のとおりです。

 

発表演題:
ST合剤を用いた大腸菌の二剤併用薬剤耐性進化実験
後藤 琉1、小谷 葉月2、 吹谷 智1、 古澤 力2,3、 前田 智也1,2(1 北大院農、2 理研、3 東大院理)

発表概要:
抗生物質が効かなくなる「薬剤耐性菌」は世界的な課題です。本研究では、耐性菌の出現を抑える新しい治療戦略を探るため、2種類の抗菌薬を同時に与えたときに大腸菌の耐性がどのように進化するかを実験室進化で調べました。葉酸合成を阻害するST合剤と、細胞壁合成を阻害するピペラシリンを組み合わせると、大腸菌が両方の薬に強くなる「二重耐性」が全く生じないことが分かりました。ゲノム解析では、単剤ではそれぞれ特有の耐性変異が現れる一方、併用では耐性に関わる変異がほとんど見られませんでした。さらに、複数の耐性変異を同時に持たせると、互いの効果が打ち消し合う「負のエピスタシス」により二重耐性が成立しないことも確認しました。これらの結果は、特定の薬剤の組み合わせが細菌の進化を抑え、耐性菌の出現防止に役立つ可能性を示しています。

 

発表演題:
12 ⽔酸化胆汁酸による褐⾊脂肪組織の熱産⽣低下に関わる肝臓由来因⼦の探索
相馬 陽1、福井 望天2、高須賀 太一1,2、石塚 敏1(1 北大院農、2 北大院国食)

発表概要:
肥満の進行に伴う褐色脂肪組織(BAT)における熱産生の低下が報告されています。これまでに、マウスに12水酸化(12OH)胆汁酸であるコール酸を食餌負荷し、肥満で生じるような腸肝循環における12OH胆汁酸の増加を再現したところ、BATで熱産生を担う脱共役タンパク質1(UCP1)の発現が低下しました。本研究では、ヒトの肝細胞株であるHepG2細胞を用いて、12OH胆汁酸であるタウロコール酸を添加することにより発現が変動したタンパク質の中からBATでの熱産生に関わるUCP1の発現に連動する因子としてトランスフェリンを見出しました。これらの結果は、12OH胆汁酸が、肝臓でのトランスフェリン分泌の減少を介してBATにおける熱産生を抑制する可能性を示しています。

 

日本農芸化学会は、農芸化学分野の基礎及び応用研究の進歩を図り、それを通じて科学、技術、文化の発展に寄与することにより人類の福祉の向上に資することを目的として、設立された学術団体です。

日本農芸化学会ホームページ
https://www.jsbba.or.jp/

 

後藤 琉さん(左)、日本農芸化学会北海道支部長の森 春英先生(中央)、相馬 陽さん(右)