農学院生産フロンティアコース修⼠課程2年の松村悠生さん、森垣拓己さん、農学部生物資源科学科作物学研究室4年の廣田和也さん(作物学研究室)が日本作物学会第259回講演会において、講演会優秀発表賞を受賞

2025年3月28日~29日に日本大学で開催された日本作物学会第259回講演会において、農学院生産フロンティアコース作物学研究室修士課程2年の松村悠生さん(口頭発表部門)と森垣拓己さん(ポスター発表部門)、農学部生物資源科学科作物学研究室4年の廣田和也さん(ポスター発表部門)の3名が講演会優秀発表賞を受賞しました。この賞は、満35歳以下の若手正会員を対象として、日本作物学会講演会において優秀と評価された口頭発表・ポスター発表に対して授与されるものです。

※所属と学年は発表時点のものです。

 

発表題目

「絹糸抽出期の糖蓄積動態が多穂型トウモロコシ品種の第2雌穂発達に及ぼす影響」

◯松村 悠生1,森垣 拓巳1,原澤 侑里1,檜山魁士2,廣田和也2,市川伸次3,平田聡之3,若林侑4,柏木 純一1,中島 大賢1

1北海道大学大学院農学院,2北海道大学農学部,3北海道大学北方生物圏フィールド科学センター,4東京大学大学院農業生命科学研究科)

 

「大型動力扇を用いた飼料用トウモロコシの地上部倒伏モーメントの実測と品種間比較」

◯森垣拓巳1・楊夢凡1・原澤侑里1・松村悠生1・檜山魁士2・廣田和也2 ・市川伸次3・柏木純一1・友部遼4・加藤洋一郎5・中島大賢1

1北海道大学大学院農学院,2北海道大学農学部,3北海道大学北方生物圏フィールド科学センター,4東京科学大学環境・社会理工学院,5東京大学大学院農業生命科学研究科)

 

「飼料用トウモロコシにおける葉面積指数推定手法の比較検討」

◯廣田和也1・今啓人2・林拓2・堀越瑞貴3・北野雅治3・松村悠生4・森垣拓巳4 ・原澤侑里4・檜山魁士1・柏木純一4・立邊竜男5・中島大賢4

1北海道大学農学部, 2道総研畜産試験場, 3高知大学IoP共創センター  4北海道大学大学院農学院, 5北海道大学北方生物圏フィールド科学センター)

 

国際的な飼料需要の高まりを背景として、国内外で作付面積が拡大する飼料用トウモロコシでは、様々な栽培環境下で安定的に高収量を確保できる品種の育成や生産現場の省力化・効率化に資する技術が求められています。

松村さんの研究では、株あたり1本の雌穂を稔実する単穂型品種の密植多投栽培が主流となっている現行の多収戦略に対して、株あたり2本以上の雌穂を稔実する性質をもつ多穂型品種を低栽植密度条件で栽培し、倒伏リスクや栽培コストの低減を目指した研究を行っています。これを達成するためには、多穂型トウモロコシ品種の第2雌穂発達を制御する生理機構や環境要因の影響を理解することが不可欠です。本発表では、多穂型・単穂型トウモロコシ品種について圃場条件下での雌穂発達過程を経時的に調査し、1)栄養成長期間中における第2雌穂への乾物・窒素分配割合と形態形成、2)第1雌穂と第2雌穂の絹糸抽出の同時性、3)受粉後の第2雌穂穎果内における糖代謝の品種間差異が多穂性発現を左右する要因であることを報告しました。

森垣さんは、国内の飼料用トウモロコシ栽培現場で主な減収要因となっている倒伏(台風などの強風によって地上部が収穫前に倒れる現象)の発生リスクを低減するための理想的な地上部構造について研究を進めてきました。倒伏は、風を受けた植物体地上部の倒伏モーメントが根系や茎部の支持力を上回った際に生じます。既往研究では、根系や茎部の支持力が強く、草丈や雌穂着生高が低い品種を育種することで耐倒伏性改善を図ってきました。一方で、葉の大きさや形状、着葉位置、節間長などの受風や風圧の受け流しに関わる茎葉構造が耐倒伏性に与える影響については解析が進んでいません。本発表では、圃場から刈り出したトウモロコシ地上部をトルク計に固定し、これに大型の動力ファンを用いて人工的な強風を与えることで、風速に対する倒伏モーメントの応答を実測するための装置を開発しました。この装置を用いて、耐倒伏性と茎葉構造が異なるトウモロコシ品種の風応答を比較したところ、個葉面積や葉身形状の鉛直分布、茎部の形態および含水率などが地上部モーメントの軽減に寄与する可能性を報告しました。

廣田さんの研究では、北海道内で近年急速に拡大する飼料用トウモロコシの作付けに対応するため、生育シミュレーションによって収量や収穫適期の予測を可能にする作物モデルの活用と高精度化に向けた研究を行っています。本発表では、測定原理が異なる6つの手法を用いてトウモロコシ群落の葉面積指数を生育期間を通して経時的に実測・推定し、その省力性と推定精度を比較しました。その結果、画像解析とドローン空撮を組み合わせた手法が栄養成長期間中における推定精度が比較的高く、省力性にも優れていました。これらの手法をさらに改良・利用することで、作物モデルのパラメータ調整に必要な時系列生育データ取得の省力化やデータ同化によるモデル予測精度の改善に貢献できると考えられます。

受賞者は写真前列左から、松村さん、森垣さん、廣田さん