JST未来社会創造事業「世界一の安全・安心社会の実現」領域
ひとりひとりに届く危機対応ナビゲーターの構築
「個人及びグループの属性に適応する群集制御」2020~2024年度の研究分担

農学研究院 愛甲 哲也 教授(花卉・緑地計画学研究室)

背景・目的

 私たちは、東京大学先端科学技術研究センターの西成活裕教授を代表者とするJST未来社会創造事業「個人及びグループの属性に適応する群集制御」において、公共空間における来場者の混雑感の計測と、情報提供・群集制御方法の検討に関する研究を分担しています。

 公園緑地では、来場者の多さは観光振興の面から歓迎される一方で、期待される体験ができないことや自然環境の劣化を招くといったオーバーツーリズム、オーバーユースの発生が懸念されます。それは、公園緑地に限らず、多くの公共施設の管理運営において共通する課題です。来場者数と行動を正確に把握し、その動態を予測し、安全・安心な利用が出来るように、適切な情報提供と群集制御を行うことが求められています。

 混雑感は、オーバーユースが懸念される国立公園などで適正収容力を定める心理的な指標として、研究が行われてきました。人数や密度が増加するのにあわせて混雑感も増加するだけではなく、そのような不快な状況を回避するような認知的・行動的対処をする場合もあることが知られています。そういった公園緑地における心理的なアプローチの知見を、公共空間における群集制御に生かそうとする研究を進めています。

図:本研究が目指す群集マネジメントシステム

研究内容

 大規模なイベントや集客施設において、来場者に混雑感と混雑を回避する行動に関するアンケート調査を実施し、計測された来訪者数・密度と混雑感の関係、対処行動を解析します。リアルタイムの混雑状況などの情報提供に対する来場者の認識と行動変容についても分析しています。

 集客施設から多数の来場者を安全に退出・誘導するために、待ち時間の設定、動線の分散、金銭的インセンティブなどにより、どの程度の行動変容が見込めるかを選択型実験という意識調査手法を用いて解析しています。

 国立公園や都市公園において、ICTを用いた利用者数の計測を行うと同時に、利用者の混雑感と対処行動についても調査をしています。各公園では、新型コロナウイルス感染症の発生後に、様々な三密対策が行われており、それらの事例収集と利用者の意識の変化も視野にいれています。

写真:来場者で賑わう公園の例(恵庭市花の拠点はなふる)

期待される成果

 人が集まることは、賑わいを生み、経済的利益にも結びつきます。しかし、意図しない渋滞や密集は不利益にもなり、場合によっては安全・安心な生活を脅かします。来場者の心理に着目し、提供すべき情報の内容、行動変容が起きる属性や条件などを明らかにすることで、適切な群集の制御に寄与することを目指しています。

 この研究プロジェクトで得られる知見は、オーバーツーリズム・オーバーユースが懸念される公園緑地の管理運営にも応用が可能となると考えています。

その他

代表者グループ
 東京大学 先端科学技術研究センター 代表者:西成 活裕

共同研究グループ
 北海道大学、大阪大学、三菱電機株式会社、セコム株式会社、株式会社グッドフェローズ、
 BIPROGY株式会社

北海道大学研究体制
 大学院農学研究院:愛甲哲也、庄子康、松島肇、金慧隣

プロジェクトページ Crowd Navigation
 http://webpark5056.sakura.ne.jp/crowdmanagement/