このページでは、2025年度に発信した学術雑誌掲載論文や書籍等を分野毎に紹介しています。

 

生物資源科学分野

本分野では、作物の生産、育種および生理、ウイルス及び微生物からの作物の保護、動物および昆虫に関する生物学、生物資源と人間生活の調和に関する各学問分野について、基礎から応用までの教育研究を行っています。作物学、園芸学、花卉・緑地計画学、作物生理学、植物病理学、動物生態学、昆虫体系学、植物遺伝資源学、植物病原学、細胞工学の10分野からなり、さらに北方生物圏フィールド科学センターと総合博物館と協力しながら教育研究を行っています。また、多数の昆虫、脊椎動物、菌類そして高等植物の研究用標本を保有しています。

 

 

応用生命科学分野

応用生命科学分野には、植物育種学、応用分子昆虫学、分子生物学、生態化学生物学、遺伝子制御学、分子酵素学、の6 研究室があり、生命現象を分子レベルで理解し、これを農業・環境問題へ応用することを主たる目的としています。主な研究内容は、イネの遺伝・発育・進化;昆虫および昆虫病原微生物の遺伝子発現制御;生物の環境応答機構とケミカルバイオロジー;作物の分子育種;酵素反応機構および糖質や蛋白質の機能開発に関わるものです。

植物育種学研究室 貴島祐治 教授

・論文名 Anther transcriptomes in cold-tolerant rice cultivars tend to show insensitive responses(耐冷性イネ品種群の葯は寒さに対して鈍感な遺伝子発現の反応を示す傾向がある)
・著者名 Koichi Yamamori (山森晃一)1, Seiya Ishiguro (石黒聖也)1, Kei Ogasawara (小笠原慧)1, Kayyis Muayadah Lubba (ルバ ムアヤダ カイイス)1, Kaien Fujino (藤野介延)2, Kazumitsu Onishi (大西一光)3, Yutaka Sato (佐藤裕)4, Yuji Kishima (貴島祐治)2 (1北大農学院(在籍当時も含む)、2北大農学研究院、3帯広畜産大学環境農学研究部門、4農研機構北海道農業研究センター)
・雑誌名 Plant Stress(植物ストレスに関連した研究分野の専門誌)
・DOI https://doi.org/10.1016/j.stress.2024.100700
・URL https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2667064X24003531?via%3Dihub
・コメント 北海道など寒い地域で育成された品種の多くは冷害に強い穂ばらみ期耐冷性(低温でも花粉が正常に発育する性質)を持っています。本研究では寒冷地の品種が共通に示す耐冷性の特徴を、花粉を作る葯に着目して遺伝子の発現を解析しました。その結果、耐冷性品種ではゲノム全体(特にリボゾーム関連遺伝子や反復配列)で発現の変化が小さい、すなわち低温に対して鈍感な性質があることを明らかにしました。
・公表日 2025年3月

 

 

 

生物機能化学分野

生物機能化学分野は、作物栄養学、土壌学、生物有機化学、生物化学、微生物生理学、食品栄養学、食品機能化学の7研究室により構成されています。生物・化学の多岐にわたる領域を対象とし、生命について生態系も含めて、土壌・植物科学、化学生物学、生物化学、細胞分子生物学、微生物学、食品科学等の観点から広く研究を行っています。バイオサイエンスとバイオテクノロジーの先端研究と技術開発を通して、食料、健康、資源、環境などの人類生存基盤にかかわる諸問題解決のための科学的基盤確立を推進しています。

 

 

森林科学分野

森林科学分野は、森林及び森林生産物に関わる広範な領域を包括する教育及び基礎研究、応用研究を担当しています。その内容は、森林の管理と経営、森林政策と森林資源経済、森林生態と森林保護、造林、砂防と森林保全、森林の化学、樹木の生理・生化学、木材の化学的利用、木材の工学的利用などです。当分野は生態系管理学、造林学、流域砂防学、森林政策学、樹木生物学、木材工学、木材化学、林産製造学の8 つの研究分野から構成され、相互協力しながら、上記の研究、教育にあたっています。さらに北方生物圏フィールド科学センターの協力も得て、研究・実習を実施しています。

 

 

畜産科学分野

畜産科学分野では、家畜の改良増殖、飼養管理及び畜産物の有効利用に関する基礎と応用について研究・教育を行っており、遺伝繁殖学、動物機能栄養学、畜牧体系学、細胞組織生物学、応用食品科学の5 研究室から構成されています。なお、本分野では家畜の生産および生産物の加工・利用の総合的技術体系に関する研究・教育の場である北方生物圏フィールド科学センターと密接な連携をとりながら研究・教育を進めています。

 

 

生物環境工学分野

生物環境工学分野は、人間と自然が調和しながら食料生産を持続的に行うために必要な、広範な理工学的手法の教育研究を行っています。農業の基盤である土地と水の制御と利用・保全に関わる「農業土木学」、農業気象学と生態系保全に関わる「生態環境物理学」、土壌をめぐる健全な水・物質循環と保全改良を担当する「土壌保全学」、農地における生産手段に関する「ビークルロボティクス」、収穫後の農産物の高品質化・安全性確保に関わる「食品加工工学」、そして資源循環型農業に関わる「循環農業システム工学」の6 研究室があります。

 

 

農業経済学分野

農業経済学分野は、農業に関する広範な領域について、経済学、政治学、社会学、環境科学などの見地から教育研究を行っており、農業政策、農業経営、開発経済、協同組合、食料農業市場などの研究分野を含んでいます。

 

 

連携推進分野

本分野には9つ研究室があります。実学としての側面を強く持つ農学のなかでは、現実社会の変化に応じて新しい研究分野が生まれています。それら新たな研究分野では大学の枠を越えて広く社会、世界、地域、社会と連携をしながら研究を進めることが大切となっています。
連携推進分野はそうした新たな研究領域を社会と連携しながら進めていく多様な研究室から成り立っています。

環境生命地球化学研究室 内田義崇 准教授

・論文名 Impact of Lead Contamination on Denitrification After Nitrate Addition to Soil: An Interaction Between Nitrogen Substrates, Denitrification Genes, and Microbial Community Structures (土壌への硝酸塩添加後の脱窒における鉛汚染の影響:窒素基質、脱窒遺伝子、微生物群集構造の相互作用)
・著者名 長田彬1、Timothy Clough2、内田義崇3(1北大国際食資源学院、2 ニュージーランド・リンカーン大学、3 北大農学研究院)
・雑誌名 Soil and Sediment Contamination(土壌・堆積物汚染に関する専門誌)
・DOI https://doi.org/10.1080/15320383.2025.2492733
・URL https://doi.org/10.1080/15320383.2025.2492733
・コメント 土壌は鉱山跡地や都市部などで鉛に汚染されるリスクがあり、鉛汚染土壌は付近に暮らす人々や生物に悪影響を及ぼします。ここでは、栄養素循環のなかでも重要なプロセスである窒素循環に関わる微生物が鉛汚染によってどのような影響を受けるのか評価しました。