植物育種学研究室
研究内容
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主な研究テーマ
イネの低温鈍感力
イネは亜熱帯原産の植物であり、北海道で稲作をするには低温障害が大きな問題となります。イネは開花2週間前の‘穂ばらみ期’が最も低温に弱い時期とされています。植物が様々なストレスに対して、積極的に応答することで耐性を得ているという考え方から、ほとんどの研究は耐性遺伝子の発見および導入を行っています。私たちは低温ストレスを感じないことでストレス耐性を示す‘低温鈍感力’という、従来の考え方と異なる例を発見しました。また、低温障害には穂ばらみ期耐冷性の向上だけでなく早生化による晩夏~秋の低温回避も有効な方法です。そのため、日長や温度条件と生育速度の関係を調査し、出穂期の調整についてより理解を深めようとしています。

キンギョソウトランスポゾンTam3の転移制御の解析
育種において重要となってくる遺伝変異を作り出しているひとつの現象として、動く遺伝子(トランスポゾン)の転移があります。実験材料であるキンギョソウにおいて、ある遺伝子座からトランスポゾン(Tam3)が転移すると、色素遺伝子が発現するようになり、花色が変化します。この転移は低温条件下で促進されます。当研究室ではキンギョソウを用いて、トランスポゾンがどのようなメカニズムでゲノム上を転移しているのかを解析しています。最終的には、トランスポゾンが新たな育種の形として成立することを目標として、研究を進めております。

葯培養における小胞子脱分化機構及び再分化植物体の解析
成熟する前の花粉が詰まった葯という袋を培養すると何が起きるか知っていますか?カルスという初期化された細胞の塊を経た後に植物体ができるのです。この植物体はほとんどが普通の植物体そっくりに育つのですが、一部は通常の植物体とは異なる性質(アルビノや、染色体数を多く持つ高次倍数性)をもつことがあり、植物の生殖や成長過程を研究するヒントの詰まったとても興味深い材料になります。本チームでは葯培養を駆使して、後代種子を作出できないアジアとアフリカの栽培イネ種間雑種から子孫を作ったり、高次倍数体イネを開発したりしてきました。さらに高次倍数体でみられる減数分裂異常の観察や、カルス形成メカニズムの究明、アルビノが発生する原因を探ることにも力を入れています。

イネの生殖隔離障壁を理解し、打破することで育種に貢献する
生物には生殖隔離障壁と呼ばれる「種(しゅ)」の壁があり、遺伝子の自由な交換を妨げています。この「壁」は、種間交配により育種を行う際に大きな障害となります。私たちは、イネの生殖隔離障壁の一つである「雑種不稔性」(雑種の種子が実らないこと)をモデルケースにして、生殖隔離障壁がどのような分子機構で生じるのか、どうやって進化してきたのか、どうすれば打破することができるのか、ということをテーマに研究を進めています。現在は、アフリカのイネとアジアのイネの雑種不稔遺伝子に着目し、遺伝子の単離、突然変異処理とゲノム編集による雑種不稔の緩和に取り組んでいます。

イネ突然変異体を用いた遺伝子解析
遺伝・育種学的研究では,突然変異体が大切な材料となっています。突然変異体では正常な遺伝子が変化して,遺伝子の機能を失ったり,その機能が低下したりしています。この変異体を調べることによってはじめてその遺伝子を認識し,調べることが可能になります。イネの草丈や小穂は収量に関わる重要な形質です。これらの形成には多くの遺伝子が作用しており、その機能を調べることは,育種の基礎として重要です。私たちは様々に誘発・選抜されたイネの形態に関する突然変異体を研究に利用しています。その中でも、葉緑素に異常が起こり白い横縞が生じる(ゼブラ)変異体と、小穂の外側器官が伸長する変異体に関して、形態学・遺伝学的な解析を重点的に進めています。

数理モデルを用いて植物の「かたち」と「動き」の本質に迫る
植物の複雑な「かたち」や、「動き」は、どのようにコントロールされているのでしょうか?私たちは、数理モデリングという手法を用い、植物のかたちや動きを計算機で再現することで、その本質的なメカニズムを探りたいと思っています。かたちや動きを把握するために必要な計測手法の開発も行っています。また、モデルを利用することで、植物の進化など、再現が不可能な現象の理解も行いたいと考えています。個々の研究に合わせて、イネ・ダイズなど、様々な作物を用います。かたちと動きのメカニズムを知り、これまでにない作物の創出を目指します。

研究室の特徴
北大農学部は、日本で最も早く育種学を開講しました。その流れを汲む植物育種学研究室は、植物の品種改良に携わる人材を多く輩出してきました。










業績
メンバー紹介
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学位 農学博士 専門 植物育種学・植物分子遺伝学 農学部担当 応用生命科学科 | 植物育種学 農学院担当 農学専攻 | 生産フロンティアコース | 農業植物科学ユニット 研究テーマ イネの育種学に関連した形質変異の研究、キンギョソウのトランスポゾン転移機構の研究
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学位 博士(農学) 専門 植物育種学 農学部担当 応用生命科学科 | 植物育種学 農学院担当 農学専攻 | 生産フロンティアコース | 農業植物科学ユニット 研究テーマ イネの種分化に関する遺伝・育種学的研究、イネの生産性に関わる遺伝・育種学的研究
詳細はこちら https://integ.synfoster.hokudai.ac.jp/lab/koide/ -
学位 博士(農学) 専門 植物育種学、植物発生生理学 農学部担当 応用生命科学科 | 植物育種学 農学院担当 研究テーマ イネ科植物の育種学に関連する遺伝・発生学的研究
研究員
- 王 莎莎 / Shasha Wang
研究テーマ:キンギョソウトランスポゾンTam3の転移を抑制するStabiliser遺伝子の機能解析
Functional analyses of the Stabiliser genes that suppress transposon Tam3
activities of Antirrhinum majus
博士後期課程 3年
- 曵地 究 / Kiwamu Hikichi
研究テーマ:数理モデリングを用いた植物器官の形態形成に関する多角的研究
~ダイズ莢形成における細胞動態解析とイネ捻れ葉変異体における構造解析~
Multifaceted analysis of plant organ morphodynamics using computational
modeling: Cellular dynamics in soybean pod formation and structural
analysis of a twisted leaf mutant in rice - Kayyis Muyadah Lubba
研究テーマ:イネの障害型低温耐性と脂質代謝との関係解明
Elucidation of the relationships between cold tolerance at booting stage
and lipid metabolism in rice
博士後期課程 2年
- Christabell Nachilima
研究テーマ:全ゲノムデータを用いたイネ葯培養におけるカルス誘導率のゲノム基盤の解明
Uncovering the genomic basis of callus induction rate in rice anther culture
using whole-genome data - 岡田 脩平 / Shuhei Okada
研究テーマ:4倍体イネの農業形質に関するQTL解析
QTL analysis of agronomic traits in tetraploid rice - Intan Widia Santika
研究テーマ:アフリカイネの遺伝解析による非生物的ストレス耐性の解明
Genetic analysis of African rice for abiotic stress tolerance - Thet Htar San
研究テーマ:アジアとアフリカイネ品種における穀粒成分関連形質の研究
Analysis of grain content related traits in Asian and African rice varieties
博士後期課程 1年
- 崔 寛 / Choi Kwan
研究テーマ:O. sativaとO. glaberrimaの間で起きる雑種不稔についての分子遺伝学的研究
Molecular genetic study of hybrid sterility between O. sativa and O. glaberrima - 三浦 誠一朗 / Seiichiro Miura
研究テーマ:イネ穎花の三次元形態形成を規定する細胞レベルのメカニズムの研究
Study on cellular mechanisms regulating the three-dimensional morphogenesis
of rice caryopsis
修士 2年
- 壽浅 侑志 / Yushi Juasa
研究テーマ:A58とA58S6交雑に特異的な交雑不親和性の遺伝子発現解析
Gene expression analysis of cross-incompatibility specific to the A58 × A58S6 cross - 宮本 康介 / Kosuke Miyamoto
研究テーマ:イネ葯培養におけるアルビノ原因遺伝子の探索
Identification of genes responsible for albino phenotypes in anther culture of rice - 𠮷田 翼 / Tasuku Yoshida
研究テーマ:キンギョソウトランスポゾンTam3のトランスポゼースを細胞質に局在させる宿主
因子の探索
Identification of host factors localizing transposase of Antirrhinum majus
transposon Tam3 to cytoplasm - 周 卓航 / Zhuohang Zhou
研究テーマ:北海道品種の早生性を特徴づけるqFDTH4の機能解析
Function analysis of qFDTH4 in the early heading riceof Hokkaido varieties
修士 1年
- 藤本 進ノ介 / Shinnosuke Fujimoto
研究テーマ:アフリカイネにおける雑種不稔遺伝子の進化と分子機構の解明
Elucidation of the evolution and molecular mechanism of hybrid sterility genes
in African rice (O. glaberrima) - 任 航 / Hang Ren
研究テーマ:通気組織を中心としたイネ根三次元構造の可視化と解析
Three-Dimensional Characterization and Structural Analysis of Rice Roots with
a Focus on Aerenchyma - 片岡 成海 / Narumi Kataoka
研究テーマ:キタアケRILs集団を用いた農業形質の遺伝解析
Genetic analysis of agronomic traits of Kitaake RILs population - 金野 優香 / Yuka Konno
研究テーマ:インディカイネにおける葯培養効率に関与する遺伝領域の探索および倍加半数体系統
における形質評価・QTL解析
Identification of genetic regions associated with anther culture efficiency
in Indica rice and QTL analysis of traits in doubled haploid lines - 森 元太 / Genta Mori
研究テーマ:同質4倍体イネ分離集団における農業形質とQTL解析について
Analysis of agronomic traits and QTLs in the segregating population of
autotetraploid rice - 塩﨑 兄典 / Keisuke Shiozaki
研究テーマ:アフリカ産野生イネO. longistaminataとアジア栽培イネO. sativa間に見いだされる
雑種不稔遺伝子座S13におけるキラー作用の解明
Analysis of the killer mechanism of hybrid sterility gene S13 found between
Aflican wild rice O. longistaminata and Asian cultivated rice O. sativa - 田口 みなみ / Minami Taguchi
研究テーマ:3次元イメージング技術を用いたイネ科単子葉植物の葉発達における成長および
細胞分裂動態の解析
3D Imaging-based analysis of growth and cell division dynamics during leaf
development in monocots - 氏家 大智 / Daichi Ujiie
研究テーマ:アフリカ栽培イネにおける高温耐性の遺伝解析
Genetic analysis of heat tolerance in African rice (Oryza glaberrima)
学部 4年
- 佐野 有 / Nao Sano
研究テーマ:Nanoporeシーケンサーを用いたトウモロコシのゲノム解析
Genome analysis of Zea mays using Nanopore sequencer - 佐藤 優亜 / Yua Sato
研究テーマ:イネ穎花における三次元的成長解析をもとにした品種間差異の研究
Study of differences between varieties based on three-dimensional
growth analysis of rice grains - 高島 佳奈 / Kana Takashima
研究テーマ:イネ葯培養におけるアルビノ形成と色素体DNA分解との関連性について
Relationship between albino formation and plastid DNA degradation in rice
anther culture - 山本 真大 / Masahiro Yamamoto
研究テーマ:4倍体イネ作出におけるゲノム編集の利用
Utilization of genome editing in development of the tetraploid rice
学部 3年
- 川上 杏奈 / Anna Kawakami
- 桐村 治憲 / Harunori Kirimura
- 山本 美宇 / Miu Yamamoto
- 岡田 結加 / Yuika Okada
- 大類 昂生 / Kosei Orui
連絡先
住所
〒060-8589 北海道札幌市北区北9条西9丁目 北海道大学大学院農学研究院
基盤研究部門 応用生命科学分野 植物育種学研究室
電話・FAX番号
Tel & Fax: 011-706-3341
メールアドレス
貴島:kishima*agr.hokudai.ac.jp
小出:ykoide*agr.hokudai.ac.jp