研究内容

主な研究テーマ

イネの低温鈍感力

ストレス耐性を向上するための研究の多くは抵抗性遺伝子の発見および導入に関するものです。これは植物がストレスに対して積極的に反応することで耐性を獲得するという考え方によるものです。私たちはこういった研究とは異なり,ストレスを感じないことでストレス耐性を獲得するという例をイネの穂ばらみ期耐冷性において発見しました。

イネゲノムから発掘した化石化ウイルス

イネのゲノムには化石化したウイルスが潜んでおり,このウイルスをもつ種は重篤なウイルス病であるツングロ病にかかりにくい性質をもっています。私たちはゲノムに潜むウイルスと耐病性の因果関係を研究しています。また,あらゆるイネにウイルスに似た配列が見つかっていることから,イネがどのように進化し世界各地に広がっていったのかを知ることができるかもしれません。

イネ種間雑種の葯培養による個体再生

世界には,日本で栽培されているイネ(O. sativa japonica)の他に,アフリカの一部で栽培されているイネ(Oryza glaberrima)や世界で広く栽培されているインディカ種(O. sativa indica)など様々な種のイネが存在します。私たちは,グラベリマ種やインディカ種とジャポニカ種間の雑種後代における葯培養について,カルス形成率や緑色再分化率を向上させるための研究をしています。葯培養効率を改善することによって,イネの育種に利用できる遺伝資源の幅を広げることを目指しています。

キンギョソウ・トランスポゾンの低温依存性転移とその制御

キンギョソウには花の斑入りを起こす系統があり、トランスポゾンTam3と呼ばれる動く遺伝子がその原因です。トランスポゾンは染色体を動き回り、転移します。Tam3は温度に反応して転移する珍しい性質があり、この性質を研究しています。また、トランスポゾンの転移は一般に宿主にとって有害です。しかし、両者が対立と協調をうまく使い分けると、共存することができます。トランスポゾンTam3の転移と制御を調べることにより、宿主であるキンギョソウとの共存の関係を理解することができます。

イネの形態形成(形づくり)に関する遺伝・育種学的研究

イネの草型や小穂は収量に関わる重要な形質です。これらの形づくりには多くの遺伝子が作用しています。これらの遺伝子を調べることは,育種の基礎として重要な研究課題であり,私たちはイネの形に関する様々な突然変異体を使って研究を進めています。

イネ突然変異体の誘発と選抜

遺伝・育種学的研究のためには,突然変異体が大切な材料となっており,私たちは様々な突然変異体を誘発し選抜しています。突然変異体では正常な遺伝子が変化して,遺伝子の機能を失ったり,その機能が低下したりしています。この変異体を調べることによってはじめてその遺伝子を認識し,調べることが可能になります。

イネの籾(もみ)を作る遺伝子

研究の一例をご紹介します。皆さんはイネの花を見たことがありますか?イネの花には花びらがなく,玄米を包む籾があります。その籾が葉のようになった突然変異体が見つかりました。この変異体には1つの変異遺伝子が関係していました。この遺伝子の研究から,正常な遺伝子は葉を籾に変更する作用を持っていると考えられ,イネの花づくりにおいて重要な遺伝子の一つであると推定されました。


研究室の特徴

北大農学部は、日本で最も早く育種学を開講したことで知られています。その流れを汲む植物育種学研究室は、植物の品種改良に携わる人材を数多く輩出してきました。私たちは、圃場や温室で丹念に植物を育て、実験室で丁寧に解析することを心がけて、品種改良に貢献する根の深い研究課題に取り組んでいます。伝統的に、イネを材料とした遺伝学的な解析を得意としています。10年ほど前から、分子遺伝学的な手法も積極的に取り入れ、ファンシーなアイディアから成果を出しつつあります。

土取作業
5月上川農業試験場での田植え、都合のいい曇天
8月しめきった暑い温室での交配
交配実験

業績

2015実績151016


メンバー紹介

博士課程 2年

  • 周 華/ZHOU Hua
    研究テーマ:キンギョソウのトランスポゾンにおける低温ストレス依存性転移機構

修士 2年

  • 胡 娜/HU Na
    研究テーマ:イネ雑種第一代におけるゲノム動態解析
  • 曽根 裕子/SONE Yuko
    研究テーマ:北海道在来種の耐冷性遺伝子座の探索
  • 平田 愛/HIRATA Megumi
    研究テーマ:キンギョソウトランスポゾン転移抑制遺伝子の解析

修士 1年

  • 相羽 亮輔/AIBA Ryosuke
    研究テーマ:イネゲノムに内在するウイルスの進化と機能
  • 稲田 江里/INADA Eri
    研究テーマ:雑種イネ葯培養由来個体のゲノム解析
  • 内山 尭/UCHIYAMA Takashi
    研究テーマ:イネ出穂性遺伝子座の相互作用の解明
  • 金岡 義高/KANAOKA Yoshitaka
    研究テーマ:日本稲とグラベリマ種間の雑種後代における葯培養由来カルス形成
  • 小矢﨑 慧/KOYASAKI Kei
    研究テーマ:イネ小穂のwhorl1に相当する器官に関する変異体の遺伝解析
  • 斉藤 希/SAITOU Nozomi
    研究テーマ:イネ内在性ウイルスから見たOryzaAAゲノムの起源解析

学部 4年

  • 増田 到/MASUDA Itaru
    研究テーマ:アフリカ稲と日本稲の交雑F1の葯培養によって得られるカルス及び再分化植物の解析
  • 山田 加奈恵/YAMADA Kanae
    研究テーマ:Oryza-AAゲノム種におけるイネ内在性ウイルス様配列の選択圧の比較解析
  • 牧谷 佳世/MAKIYA Kayo
    研究テーマ:キンギョソウトランスポゾンTam3の転移に関わるT3IF因子の解明
  • 藤村 健太郎/FUJIMURA Kentaro
    研究テーマ:北海道在来イネ系統の耐冷性に関する交雑集団を用いた遺伝学的解析
  • 川島 拓也/KAWASHIMA Takuya
    研究テーマ:イネにおける数種の変異体(奇形小穂、ゼブラ分矮)の遺伝解析

学部 3年

  • 宇津 康太郎/UTSU Kotaro
    研究テーマ:
  • 倉沢 洋佑/KURASAWA Yosuke
    研究テーマ:
  • 高橋 奈那/TAKAHASHI Nana
    研究テーマ:
  • 北嶋 ゆき/KITASHIMA Yuki
    研究テーマ:
  • 大東 拓朗/OHIGASHI Takuro
    研究テーマ:

連絡先

住所

〒060-8589 北海道札幌市北区北9条西9丁目 北海道大学大学院農学研究院
応用生命科学部門 育種工学分野 植物育種学研究室

電話・FAX番号

Tel & Fax: 011-706-3341

メールアドレス

貴島:kishima*abs.agr.hokudai.ac.jp
高牟禮:takamure*abs.agr.hokudai.ac.jp