分子生物学研究室
研究内容
リボソームによる細胞内環境の検知と遺伝子発現制御機構
リボソームは,mRNAを翻訳してタンパク質を合成する装置ですが,単なる翻訳のみを行っているのではなく,細胞内の状態を検知して,翻訳を停止し,さらには翻訳中のmRNAを分解することさえある知的な装置です。植物におけるメチオニン生合成の鍵段階を触媒する酵素は,こうしたリボソームの新機能によってフィードバック制御されています。私たちは,その分子機構の解明と応用を目指して研究しています。
uORFにコードされる新生ペプチドによる翻訳制御機構
真核生物のmRNAにはタンパク質をコードするORFは1つしかありませんが、5′非翻訳領域にuORF(upstream ORF)と呼ばれる短いORFが存在する場合があります。そのようなuORFが下流のORFの翻訳効率に影響を与え、タンパク質合成量の調節に関わる例が知られています。私達のグループでは、その中でuORFにコードされるペプチドが関与する新しいタイプの遺伝子発現制御機構の解明を目指しています。
植物のミネラルトランスポーターの制御機構
植物は根からミネラル(無機栄養素)を吸い上げ、体内を循環させて利用しています。ミネラルの効率的な利用には、ミネラルの膜透過を促進するタンパク質<トランスポーター>が様々な細胞で適材適所に配置されることが重要です。私たちは、必須ミネラルの一つホウ素のトランスポーターが、細胞膜内で偏って局在する現象や環境の変化に応じて量や局在を変える現象のメカニズムの解明、そして応用を目指しています。
主な研究テーマ
- リボソームによる細胞内環境の検知と遺伝子発現制御機構
- uORFにコードされる新生ペプチドによる翻訳制御機構
- 植物のミネラルトランスポーターの制御機構
研究室の特徴
私たちの研究室ではアブラナ科の一年生植物であるシロイヌナズナを用いて,何か興味深い生命現象に注目してそれに係わる遺伝子発現制御の研究をしています. 遺伝子発現制御の研究は本来,生理学と生化学,そして遺伝学が互いに助け合いながら進めて行かねばなりません.例えて言えば生化学と遺伝学は車の両輪であり,生理学は車の行く先を教える地図であるといえるでしょう.生理学的研究によって得た興味ある知見を,生化学と遺伝学によって解明しようとするのです.この例えで言えば分子生物学は車のエンジンに相当します.エンジンがしっかりしている方が,より速く,そしてより確実に目的地に到着できます.
メンバー紹介
-
学位 博士(理学) 専門 分子生物学 農学部担当 応用生命科学科 | 分子生物学 農学院担当 農学専攻 | 生命フロンティアコース | 応用分子生物学ユニット 研究テーマ 分子生物学
-
学位 博士(農学) 専門 植物分子生物学 農学部担当 応用生命科学科 | 分子生物学 農学院担当 農学専攻 | 生命フロンティアコース | 応用分子生物学ユニット 研究テーマ 非AUG開始型の上流ORFによる翻訳制御の機構とその生理的役割,ポリアミン生合成調節機構とその応用
OB・OGの進路
日清製粉株式会社、新潟県警察、味の素株式会社、雪印メグミルク株式会社、和弘食品株式会社、株式会社エスアールディ、高田製薬株式会社、住化農業資材株式会社、日清食品ホールディングスほか
連絡先
住所
〒060-8589 北海道札幌市北区北9条西9丁目
北海道大学 農学部 総合研究棟5階
電話・FAX番号
Tel 011-706-3841