遺伝資源とは

 人間の活動に利用可能なものは資源と見なすことができます。古来、人間は農作物や家畜を生産活動に用いることをはじめとし、生物をさまざまな用途で利用してきました。その背景には生物に存在する遺伝的な多様性があります。人間が利用する観点でみた、遺伝的な要素を供給しうる生物や、生物に由来する遺伝的な要素に関連したものを遺伝資源と呼びます。この概念は、実際に人間が利用可能であるもののみならず、潜在的に利用する価値があるものも対象として含みます。

植物の遺伝資源に関する研究

 植物の遺伝資源を研究することは、その探索、収集、維持、特徴付け、利用等を含み、それはさまざまな学問分野と関わります。例えば、植物の遺伝資源に存在する多様性に関する理解を深めることは、遺伝学、分子生物学、植物学、生理学、進化学、生態学などの基礎生物学の研究と共通した要素を含みます。また、植物の遺伝資源を利用することは、食料や飼料、有用物質の生産等に関わり、作物の育種素材として品種改良に用いることや、代謝産物を創薬に用いることなどの生物科学の応用分野に結び付きます。これらに加え、その研究は、生物多様性や環境保全、エネルギー生産を含む地球規模の課題、さらには、民族の歴史や文明の発展など、幅広い事柄に関連します。

植物遺伝資源学研究室では

 植物遺伝資源学研究室では、上記の視点を持ちながら、第一に、主要作物、花卉、実験用のモデル植物を含む、さまざまな植物を対象として、遺伝的多様性を生み出す仕組みを解明することを目指した研究を行っています。この目的から、とりわけ、本研究室が保有するダイズに関する野生ならびに栽培系統を含む多数の遺伝資源を利用した研究を展開してきました。本研究室では、植物の形質発現の実体を理解することに加え、農学に求められるさまざまな課題の解決に取り組む観点から、ゲノム編集および遺伝子組換え技術を活用して特定の形質を改変する技術の開発と最適化を進めています。また、RNA機能やエピジェネティクスを利用した遺伝子発現の制御、ならびに、転移因子の利用や新規な突然変異の誘発等に基づき、植物の持つ可塑性を引き出し、遺伝資源としての多様性を拡大することを目指した研究を行っています。

 本研究室の研究内容の詳細については、各教員のウェブサイトをご覧下さい。